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読書感想文【甘城ブリリアントパーク1】=賀東招二…もし最愛の姫が犯罪の事実を知ったら

この記事では小説【甘城ブリリアントパーク1】を読んだ感想を、読書感想文の定型である「結→起→承→転→結」を意識して述べています。

結1=この本を読んで得たこと

たとえ大切な人を守る目的であれ、犯罪の末に手に入れたものに尊い価値はないと、心に刻みました。

起=【甘城ブリリアントパーク】とは

【甘城ブリリアントパーク1】は、2013年に株式会社KADOKAWAから発行された、富士見ファンタジア文庫レーベルのライトノベルです。

著者は賀東招二さん。小説の他に脚本家も担当しています。ライトノベルでは「フルメタル・パニック」など、多くの著作があります。

【甘城ブリリアントパーク】は人気シリーズとなり、マンガ化、アニメ化などエンターテイメント展開されています。

物語のコンセプトは「潰れかけた遊園地を再建せよ」です。詳しくはどんなお話なのでしょうか。

承=物語のあらすじなど

高校生の可児江西也は、謎の美少女転校生である千斗いすずにマスケット銃を突きつけられ「わたしと遊園地に行かない?」と誘われます。誘われるというよりは、強制連行ですね。

2人が出かけたのは「ダメなデートスポットの代名詞」として名高い、甘城ブリリアントパークという遊園地でした。

支配人は魔法の国メープルランドの王族・ラティファ。ラティファは、遊園地に来た地上人のお客さまの楽しい気持ち、わくわくする気持ちを集めて結晶にしたものが魔法の国の住人たちのエネルギーになると西也に説明します。

しかし、甘城ブリリアントパークは時代遅れの遊園地として客足が伸びず経営が行き詰まっていて、遊園地に出資している企業から閉園を迫られています。

西也は、ラティファから「この滅亡寸前の遊園地を、あなたに建て直して欲しい」と依頼されました。

転=心に残ったこと

あと2週間で10万人の入場者数を達成できないと経営権が奪われる、という時間制限。

主人公の西也が支配人代行になると決意したのは、遊園地のキャスト達の前で現状を報告し涙をこらえるラティファ姫を、見ていられなかったから。

物語の基部にわかりやすい構造があり、世界観になじみやすく、スムーズにページを繰ることができます。

支配人代行となった西也が、最初にキャスト全員に課したのは、持ち場の清掃と修繕に努めることでした。

甘城ブリリアントパークは、なぜ落ちぶれてしまったのか。

どうしたら2週間で合計10万人もの客を動員することができるのか。

そのためには、来園者視点で「どんな遊園地なら行きたいか」を考えること。

なるほど、まずは基本のクレンリネスから始めるとは、なかなか切れ者の高校生のようです。

順調に少しずつ入場者数を増やしていく甘城ブリリアントパークですが、数日前まで閑散としていた遊園地に2週間で10万人の客を呼ぶのは、やはり無理があります。

西也がとった策は、小さな犯罪を決行して客足を遊園地に向けることでした。

近隣のスタジアムで開催されるサッカーJリーグの開幕戦の前日に、スタジアムに火をつけて、小さな火災を起こしてしまいました。

残念です。

物語としては、サッカーの試合の代替地として、ブリリアントパークで過去の遺物として忘れられかけていたスタジアムを使用することになり、約5万人の観客が甘城ブリリアントパークに来場する結果となりました。

果たして、それで良いのでしょうか。

大切な人を守るために罪を犯すことに、美徳などあるのでしょうか。

西也が犯した小さな犯罪によって、少なからずの人が被害や迷惑を受けました。

サッカーJリーグの開幕戦ですから、超満員の観衆が集まります。

超満員の観衆を夢中にさせるべく選手たちは、開幕戦に照準を絞りコンディションを仕上げます。

多くの企業がスポンサーとなり、ひとつのイベントを盛り上げます。

楽しみは、犯罪によって、かき消されてしまうのです。

代替地で開催されるから良し、としてすべてが丸く収まる道理など、ありません。

どんなに目的が尊いものであろうと、そのために及ぶ行為が犯罪なら、決して許されないはずです。

結2=まとめ

姫を守った主人公は、今後も遊園地の経営に関わるようです。

高校生という、繊細な心に揺れる時期に手を染めた犯罪は、たとえ小説上で描かれなかったとしても、本人の胸のうちに暗い影を落とします。

この件を唯一、知っている共犯者の存在に脅かされる時もあるでしょう。

人が支え合ううえで、本当に守らなければならないものは何か。

なぜ法律や規則、ルールがあるのか。

ルールが及ばないところにある道徳とは何か。

この物語は、主人公を犯罪者に堕としたことで、逆説的に読者に思考を促しています。

西也くんに語りかけるなら、ひとつだけ。

「自首しないか?」

甘城ブリリアントパーク1 (富士見ファンタジア文庫)

甘城ブリリアントパーク1 (富士見ファンタジア文庫)

 

終わりに

私が大好きだったプロ野球チームが、大人の事情によって、消滅しました。プロ野球はビジネスですから、力のないチームが淘汰される危険が無いわけではありません。

しかし、自分が好きだったものが無くなってしまった悔しさや虚脱感は、容易に無くすことはできません。

ダメになる前に、できることは無かったのか。

もし…もし、自分が支配人代行に選ばれたら、どんな具体策を検討し、実行しただろうか。そこに立ちはだかる壁は何か。やはり無力なのか。

犯罪に手を染めるくらいなら、夢はあきらめるべきなのか。いや、あきらめた時が限界だ。

【甘城ブリリアントパーク】は、私の叶わなかった夢を、思い出させてくれました。