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【相棒2-15「雪原の殺意」2-16「白い罠」感想】心に響く右京さんの名言

この記事ではテレビドラマ【相棒2第15話「雪原の殺意」→第16話「白い罠」(2話連続)】の感想などを記述しています。

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感涙の名作

涙が止まりません。めくるめく展開される人間ドラマ。感動のラストシーン。【相棒】なのに「北の国から」を見ているような感覚。2話連続なのに、1話だけ見ても面白い。でもやっぱり2話連続で見たらもっと面白い。絶妙です。

【相棒】はいわゆる刑事ドラマですが、ゲスト登場人物の心情が濃厚に描かれる点に魅了されます。

「雪原の殺意」と「白い罠」の2話連続作品は、雪の北海道を舞台にしたシリーズ初期の名作です。

1話目では殺人事件をきっちり解決。2話目では、1話目で蒔かれていた伏線が、登場人物の思惑を交錯させながら回収されます。

右京さんは淡々と、亀山薫は感情を爆発させ、事件に関わった人の心の移ろいに寄り添います。

「雪原の殺意」の導入部分を振り返ってみます。

舞台は雪の北海道

本宮沙雪は、都内で男から金をもらい、ホテルに入ろうとしました。その様子を見た亀山くんが、沙雪を保護します。

沙雪は売春と売春斡旋容疑での公判前に、北海道から逃走していました。亀山くんは、彼女を札幌まで護送します。

沙雪の売春斡旋を手引きしていたのは、ホストの加茂内という男か。亀山くんは独自に捜査を開始しますが、何者かに襲われて意識を失ってしまいます。心配した右京さんは札幌入りします。

そして、加茂内が自宅で殺された…。

沙雪の母みどり。沙雪を尾行する謎の中年男性。加茂内とつかみ合いのケンカをしていた沖真二。美濃部刑事と北川刑事。それぞれの思惑が絡んで。

売春の理由 

本宮沙雪の父は10年前に人を殺して、死刑となりました。不況の波は、小樽の小さな町にも押し寄せていました。しかし、殺人は言語道断。沙雪の闇は深まり続けます。「この10年間、楽しいことなんてひとつもなかった」と。

高校を卒業して大学に通い始めましたが、傷が癒えない彼女は夜の街に吸い込まれました。ホストクラブ。売春。売春斡旋。好きになった男の言いなりになります。「彼は私の10年前を知らないから」。沙雪は騙されていました。

もう生きている価値なんて無い。

どこまでも後ろ向きです。誰にも心を開かなくなって。そんな彼女を唯一、救ってくれるのはコレッジョという画家の画集でした。

雪みたいに消えたい

殺人や殺人未遂事件の解決とともに、右京さんと亀山くんが、沙雪の心をどうやって開かせるのか。

【相棒】で10代を中心とした若年層がゲスト主人公となる回のほとんどは、その人物の心の移ろいが丁寧に描かれます。なぜ心を閉ざすようになったのか。何に葛藤を抱いているのか。本当はどうしたいのか。

「消えちゃいたい。雪みたいに」。心配する亀山くんに「じゃあ私を買ってよ」。そんなこと言うなよ、と思うのだけれど、言ってしまう気持ちが伝わってきます。

許すという選択肢

10年前の殺人事件の被害者家族が、沙雪にライフルの銃口を向けます。彼女は表情を変えずに「撃って」と言いました。

右京さんはライフルを構えていた男を諭します。

「ぼくには、あなたがいちばん苦しんでいるように見えます」と。

ここから【相棒】シリーズでも屈指の名セリフが右京さんによって語られます。

「同じ苦しむならば、許すという選択肢は無いのでしょうか。あなたは撃たなかった。いや、撃てなかったんですよ。

その気持ちこそ、人が生きていく上で大切な約束だと、ぼくは思います。

たとえそれがどんなにつらくても、やりきれなくても、人はそのように生き直さなければならないんです」

右京さんのセリフは男に響いたでしょう。それ以上に、沙雪の心に変化をもたらしました。彼女の内面が、急速にでは無く少しずつ移ろいます。繊細な描写こそ【相棒】の本領です。

やさしさに包まれて

沙雪が真実に心を開いたのは、何度もコレッジョの画集を送ってくれた人物でした。謎の中年男性が何者か判明して、沙雪はショックを受けます。ひょっとしたら、目の前にいる男は、自分が最も恨むべき人間なのではないかと。

自分は10年前の事件の被害者家族に恨まれていた。自分は父親を恨んでいる。どうしようもない傷がある。しかし。

その中年男性は、ずっと自分と母親のことを気にかけてくれていた。

沙雪は、周囲の人のさまざまなやさしさに触れても、最後まで抵抗していました。自分の内面さえ見えていないのに、他人の心なんてわかるわけがない。

そんな沙雪の脳裏に、右京さんのセリフが浮かんだかもしれません。

「同じ苦しむならば、許すという選択肢は無いのでしょうか」

目の前にいるのは、人を殺した人間です。人を殺すのは言語道断です。いや、そうじゃない場合がある?例外がある?

法律で問われない殺人がある?沙雪の心は、揺れに揺れたでしょう。

その男を許すには、時間がかかるかもしれません。母は男に「もう二度と来ないでください」と言いました。きっと自分も、もう二度とその男には会わないだろう。

だからこそ。

沙雪は、自分の心の施錠を解きました。

そして迎える、ラストシーン。あまりにもベタなんだけれども、涙を流さずにはいられません。

 

出演=水谷豊、寺脇康文、前田愛、内田朝陽、マギー、一柳みる、小野武彦ほか 脚本=櫻井武晴。監督=和泉聖治

「雪原の殺意」=2004年2月4日放送、「白い罠」=2004年2月11日放送