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【相棒11最終話「酒壺の蛇」感想】もし彼氏が根本から嘘まみれだったら。

この記事ではテレビドラマ【相棒season11最終話「酒壺の蛇」】の感想などを述べています。

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右京さんは蛇か酒か

カイトくんの父親である甲斐峯秋警察庁次長は、警視庁の内村刑事部長との会話で「酒壺の蛇」という話を持ち出しました。

「あなたに見えているのが恐ろしい蛇でも、私に見えているのはなかなかおいしい酒かもしれない」と。

【相棒season11最終話「酒壺の蛇」】では、誰が「あなた」で誰が「私」、そして誰が「蛇」だったのでしょうか。その答えは明示はされていません。視聴者の想像に任せられました。

たとえば内村刑事部長を「あなた」、「蛇」を右京さん、「私」を甲斐パパに充ててみます。内村刑事部長にとっては目の上のたんこぶな右京さんを、甲斐次長は「おいしい酒」として見ている、というような。

あるいは、今回の事件そのもの。自分の権力を強めるために、犯罪者を国外に逃がしたとしたら。思惑通りに事を運んだ甲斐次長は、酒壺の中の酒をしたたかにすすったことでしょう。

しかし。

事件のとっかかり

組織犯罪対策五課の角田課長と同期である二課の恩地課長が死体で発見されました。捜査に乗り出した特命係の二人は、恩地課長が「AJファイバー」という会社の君原いずみと接触していたことを突き止めます。

AJファイバーは航空会社「AJ A」の子会社です。主要製品は炭素繊維。炭素繊維は航空機の機体に使われています。炭素繊維はミサイルや戦闘機の複合材などに使われることもあり、外為法で輸出が厳しく制限されています。

炭素繊維の国外持ち出し。どうやら恩地課長は外為法違反容疑の単独捜査をしていたようです。

恩地課長は、なぜ死ななければならなかったのか。

「優秀」と「愚か」と「純粋」

君原いずみは王という彼氏を心の底から愛していました。王が偽名で自分と交際していることを知りました。彼に問いただすと、事情を説明されました。いずみは、考えることを放棄して、今まで通りに彼を愛し続ける決意を固めました。

しかし。いずみは、彼から手紙を受け取りました。

「そんな君を私は心の底から愚かだと思う。そんな君を私はずっと嫌いだった。これからも、ずっと嫌いだ」と書かれていました。

いずみは泣き崩れました。考えることをやめた自分を、彼は愚かだと思っていたのか。愚かだから利用されたのか。

この後、君原いずみは考えたのでしょうか。なぜ、王がわざわざ「愚かだ」「嫌いだ」と書いた手紙を自分に宛てたのか。その文面は、本当に彼の真意だったのか。

愛におぼれた女

人によって、ものの見方や見え方は違います。ある人には蛇に見えるものが、違う人には酒に見えることがあります。

最初からものごとにネガティブな反応をする人。ポジティブに受け取る人。

君原いずみが彼氏との愛におぼれるために考えることをやめてしまったのは、ネガティブな反応です。「この人、ネガティブだなー」と感じただけで通過してしまったのですが。後からもう一度ストーリーを追ってみて、「もし自分が交際相手に嘘をつかれていたら」と自分に問いかけて、よろめきました。

名前を偽られていているどころか、国籍まで嘘だったら。

あまりにも突飛すぎて、すぐには飲み込めないかもしれません。壮大なスケールのドッキリ企画なんじゃないだろうか。時間がたつにつれて、本当の嘘だとわかって、それでも相手のことが好きだったら。

きれいさっぱり別れられるだろうか。考えることをやめて、現実から逃げて、愛におぼれるだろうか。あるいは、他の選択肢があるのか。

 考えることをやめたくなる気持ちが腑に落ちました。どうやら私も現実から目を背けたくなってしまうタイプのようです。どの選択肢を選んでも、他の選択肢を選ばなかった後悔を背負ってしまいそうな気がして、動けないのです。ネガティブな反応です。

「酒壺の蛇」は、考えることをやめてしまうことと、考えることをやめない時の差を教えてくれます。

ある人には蛇に見えて、ある人には酒に見えている「それ」について、何かしら考えなければ、いつまでたっても蛇と酒。どう考えて行動するか。結果が酒になるか蛇になるか。蛇になったとしたら、どうしたら酒に変えられるかを考えること。人はそうやって成長していくのかな。

「優秀」って何? 

右京さんは、甲斐次長に「酒壺の蛇という話を知っているかね?」と訊かれて、スラスラと答えます。

ケチな僧侶がいて、たくさんあるモチを、人々には分け与えずに壺に入れて、酒を造ろうとした。やっと酒ができあがる頃に壺の中を覗いてみると、モチが蛇に変わっていた。驚いた僧侶は壺ごと捨ててしまうが、その壺を拾った男たちが壺の中を見ると、おいしいお酒が入っていた。

自分の知識以上に詳しい右京さんに、ムッとする甲斐パパ。

「モチが蛇に変わったのは、愚かな人間のせいだ。優秀な人間なら、蛇だって酒にできる」

ストーリーを追いながら見ていた時点では違和感を覚える程度だったこのセリフ。後から考えてみると、蛇を酒に変えることができる、というのは同意見なのですが。

「優秀な」の部分が、人によって蛇に見えたり酒に見えたりするのかな、と感じました。

「優秀」とは何を指すのか。何かと比較しない限り「優秀」かどうかはわかりません。では、比較対象は何なのか。

甲斐パパと右京さんでは、カイトくんについての見識が違います。

カイトくんを「愚か」と判断する人。「純粋だ」と評価する人。右京さんは「優秀」という言葉を使いませんでした。

酒壺のモチ

 君原いずみは、どこで間違ってしまったのか。どうすればよかったのか。「酒壺の蛇」は、その答えがしっかりわかる内容でした。

蛇に見えるか、酒に見えるか。ネガティブかポジティブか。人によって反応は違うけれど、まずは落ち着いて「モチ」をよく見るところから始めてみましょうか。