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【読書感想文「小説版NARUTO」】マンガもアニメも未体験のナルトの世界に、ノベライズから入ってみた。

何日か前の夜、電車に乗っていました。
ロングシートの座席は8割がた埋まっていて、その大半は、スマートフォンをいじる人か、眠っている人のどちらかでした。
私の隣に座っていた女性は、そのどちらでもなく、本を読んでいました。マンガでした。ページの端っこに「NARUTO」と記されていました。
知名度の高い作品ですが、私は主人公の名前がナルトであることを知っているくらいです。
どんな物語なのだろう、と興味が湧きました。
マンガもアニメも長期にわたり続いていて、最初から追いかけるのは大変そうです。
とっかかりをつかめなないまま時が過ぎて、「NARUTO」について忘れかけた頃、書店で小説版の作品を見つけました。
「NARUTO」の世界に、マンガやアニメではなく、小説から入ってみるのも面白いかなと思い、さっそくその本を購入して読んでみました。

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私が手にとったのは「ROAD TO NINJA-NARUTO THE MOVIE-」というタイトルで、これは劇場版作品のノベライズ本でした。

「NARUTO」とは

「NARUTO-ナルト-」は、「週刊少年ジャンプ」に1999年から2014年まで連載された、岸本斉史によるマンガ作品です。連載は全700話。単行本が72巻まで出た大作です。
アニメやゲーム、演劇など多岐にわたりメディア展開されました。
劇場版作品も数多く製作され、「ROAD TO NINJA-NARUTO THE MOVIE-」は、劇場版第9作として、2012年に公開されました。
今回、私が読んだのは、この作品の書き下ろしノベライズ本で、著者は岸本斉史と宮田由佳です。劇場版公開の同年に集英社インターナショナルから発行されました。
上記の知識は、読了してから調べたものです。私は、「NARUTO」がすでに完結した作品であることすら知りませんでした。

序盤はキャラクターや専門用語の多さに戸惑う

本の最初に、主なキャラクターの簡単なプロフィールとイラストが掲載されていました。ここで紹介されていたのは、うずまきナルト、春野サクラ、マダラ、波風ミナト、うずまきクシナの5名です。「九尾」やら「五代目火影綱手」やら「万華鏡写輪眼」やら、マンガやアニメの世界観を知っていると容易に想像できるのかもしれないワードが出てきて、本文を読む前に戸惑いました。
本文の22ページから23ページの見開き2ページには、多数のキャラクターが登場します。
カカシ、うちはイタチ、天道、小南、サソリ、デイダラ、干柿鬼鮫、飛段、角都、サイ、サクラ、シカマル、いの、チョウジ、ガイ、リー、テンテン、ネジ、キバ、赤丸、ヒナタ、シノ。一気にこれだけ出てくると、敵と味方を判別するだけでも大変です。ふりがながないと読めない名前もあります。

ナルトの葛藤が表面化してくる

序章でいきなりナルトの両親であるミナトとクシナが死んでしまいます。
第1章では「S級犯罪者集団」や「第四次忍界大戦」などの、ものものしいワードが出てきます。
どうやらこれは、ざっくり表現すると、ナルトと仲間たちが悪い奴をやっつけられるかどうか、というバトルもののようです。
しかし、わからない用語を飛ばして読んでいくうちに、この作品は、単に善が悪と戦うだけではなく、ナルトとサクラの内面のゆがみや葛藤を描いていることに徐々に気がつきました。
89ページ。
「ナルトの心は大きく乱れていた。ナルトは誕生したその日に、両親を失っている。だからこそ心の底から、父と母に会いたいと思っていたのだ。だが…その願いが叶ったところで、この世界はナルトたちが本来いるべき世界ではない。」
115ページ。
「だからナルトは、偽りのクシナの体を突き放そうとした。だが、それがどうしてもできない。怒り。悲しみ。罪悪感。そして…吹き荒れる感情の嵐に心を乱され、ナルトはきつく目を閉じた。」
ナルトたちは、目の前の敵だけではなく、他者には見えない部分で立ちはだかる敵とも戦います。
中盤から後半にかけては、自分の心の傷と向き合い克服し、成長していく姿に引き込まれます。

ヒーローズジャーニーらしい怒涛の後半

読んでいるうちに、この作品が「ヒーローズジャーニー」と呼ばれる、ベストヒットを生み出すエンターテイメント作品のシナリオを、ほぼ忠実に踏襲していることに気がつきました。
ヒーローズジャーニーは、日常世界にいるヒーローが冒険に出て、最大の試練に打ち勝ち、再び日常世界に帰還するまでの過程をパターン化したものです。
「ROAD TO NINJA」のノベライズ本は、冒頭でナルトが「忍者って何?」と師匠に問いかけます。終章を迎える頃には、ナルトは「忍者とは何か」を、自分の言葉で解釈し、自分が忍者であることを誇りに思うようになっています。
その間には200ページ近い葛藤があります。
自身の誕生と同時に父と母を失ったナルトは、サクラが家族と仲良くしている姿を見て、やけっぱちな気分になっています。
ナルトとサクラの前に、16年前にナルトを人質にしたマダラが現れます。
ナルトたちは、日常世界から非日常の世界へ旅立ちます。
非日常の世界でいくつかの試練を乗り越えた後に、最も危険な場所へ接近し、最大の試練を迎えます。
ナルトが戦いの果てに死んでしまったかのように見せる展開は、ヒーローズジャーニーのクライマックスの典型とも言えるシーンです。
わかってはいつつも、ナルトが死なずに、成長した姿で元の日常世界に戻ってくる「お約束」な展開に、感動したり、ホッとしたりします。
娯楽エンターテイメント映画を小説化した作品だからこその、ダイナミズムにあふれています。伏線の回収も鮮やかに決まります。

意外に?純粋に「楽しかった!」

読み終えた時に、私は純粋に「楽しかった!」と思いながら本を閉じました。爽快な気持ちになったのは、意外でした。
読み始めた時の、初心者が物語に入りづらい、あの感覚が、きれいに消えていたからです。
私がこの作品を楽しめたのは、マンガやアニメの世界を知らない初心者ゆえに、キャラクター像などの束縛がないぶん、自由に想像の世界を広げられたからなのかもしれません。
巻末に、主要キャラクターの設定画ギャラリーがあります。どのキャラクターがどんなイラストで描かれているのか、答え合わせをしてみたら、ほとんどのキャラクターは、私が想像した産物とはまったく違いました。
私の想像より大人びているサクラ、想像より不気味な「仮面の男」など、もう一度読んだら、別の世界の話になるかもしれません。

 

ROAD TO NINJA -NARUTO THE MOVIE-(通常版) [DVD]

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ノベライズから入ると自分だけの想像が広がる

ヒットした小説がマンガやアニメ、実写化されるなど、他メディア展開されるケースが以前より増えている気がします。
反対に、ヒットした映画やドラマなどのノベライズ化もあります。「名探偵コナン」や「相棒」のノベライズは、よく読みます。
ノベライズ化の市場規模がどのくらいなのかはわかりません。探せばいろんな物語のノベライズ本にたどり着くことでしょう。
「NARUTO」シリーズのノベライズ本もいろいろあるようなので、いつかこの世界観に戻ってくるかもしれません。
この作品と引き合わせてくれたのは、電車の中でマンガの「NARUTO」を読んでいた女性です。
あの人は「NARUTO」を読んでどんな感想を持ったのか。
想像は止まりません。