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【相棒14第9話「秘密の家」感想】もし家族が秘密のために壊れたら

この記事ではドラマ【相棒14第9話「秘密の家」】の感想などを記述しています。

最終回の奇跡→秘密の家

「秘密の家」は2015年12月16日に放送されました。その1つ前に放送された作品が「最終回の奇跡」です。

藤井清美さんの脚本回である「最終回の奇跡」は、事故で再起不能と言われていた天才漫画家の葛藤が、池澤辰也監督によって美しくドラマ映像にまとめられていました。

続く「秘密の家」も、池澤監督作品です。脚本は金井寛さん。

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(画像引用・テレビ朝日、東映)

私は金井さんの脚本作品が大好きです。「殺人の定理」や「ケンちゃん」などの、数式が事件のカギになる理系バリバリの作品。「エントリーシート」や「ヒーロー」などの意外な真犯人。いろんなパターンがあります。どの作品にも「葛藤」と「摩擦」がていねいに描かれています。

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「秘密の家」のテーマは「家族」です。葛藤の教科書のような題材です。

小学生が抱える葛藤

神田ひなたは日野市に住む小学校低学年の女の子。

母親の志乃へのプレゼントに、似顔絵を描きました。母は突然の誕生日プレゼントを喜んでくれました。

ところがその日、犬の散歩に出かけた母親は、帰ってきません。母は誰かに誘拐されてしまったらしい。その日と翌日、ひなたは学校を休んで、父と一緒に家にいました。

身代金と引き換えに、母親は帰ってきました。ひなたはその後、母親のことが心配でたまらなくなります。

友達の舞ちゃんと杏ちゃんが公園に遊びに行こうと誘ってくれましたが、一瞬迷ってから断りました。

あの2日間のことは、絶対に誰にも言ってはいけない秘密。不安と警戒心は、ひなたの心から本当の笑顔を奪っていきました。

他人の家庭を覗きたい

【相棒】で小学校低学年の女の子がストーリーのカギを握る回といえば、season8の「右京、風邪をひく」が挙げられます。病気がちでなかなか外に出られない少女と、外から少女を勇気づけた孤独な老人の心の交流。

どうやらあの少女は家族には心を開いていなかった模様。

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「秘密の家」の神田ひなたは、家族に心を開いているのだけれど、親を心配するがゆえに、自分の気持ちを前面に出さなくなってしまったようです。

【相棒】は家族をテーマにした作品を何度も扱っています。家族。私たちは自分たち以外のそれぞれの家庭で、その家族がどんな気持ちで過ごしているのか、よく知っているわけではありません。だからこそ、他人の家を覗いてみたい。

【相棒】は、視聴者の欲望をうまく掴んでいるドラマシリーズです。どうやら視聴者は、万事に渡りうまくいっている家庭よりも、何かがギクシャクしている家庭に潜入したいようだ。

じゃあ、家族の葛藤やすれ違いには、どんなものがあるか。想像してみると、葛藤やすれ違いは、人の数だけあります。いわんや家族をや、同じ屋根の下で暮らしているのだから、より深い摩擦があります。

刑事ドラマで犯人が事件を起こす動機のほとんどは「家族」か「お金」。「秘密の家」は「家族」と「お金」の両方が動機になりました。犯人、どうしようもない野郎です。

真相が明らかになった後、神田ひなたには笑顔が戻ります。友達と遊びに「ひまわり公園」に出かけます。

しかしその裏で彼女に「本当の」笑顔が戻ったのかどうかは、少し考える余地があります。

なぜか。次の文でネタバレしますよ。

右京さんが語る「幸せ」とは

犯人の1人は、ひなたの父親でした。

私はこのブログで金井さんの脚本作品を何度か感想記事にしています。その時によく「まだ見ていない人のために、真犯人は伏せておこう」と思います。犯人はAと思わせておいてBだったという、いわゆるミスリードで楽しませてくれる作品が多いから。

しかしこの回は「秘密の家」で何が起こっていたのかを考えると、犯人の1人がひなたの父親であることは容易に想像がつくので、書いちゃうことにしました。

ただし共犯者もいますよ。

父親は「こうするしかなかったんだ」と理由を話します。5000万の負債を抱えた自分の会社。潰れたら志乃とひなたを路頭に迷わすことになる。だから、仕方なくやったんだ。 

妻を誘拐するという、しょーもない事件を。

右京さんは珍しく、ちょっと長めに父親を叱責します。

「ひなたちゃんは、母親の誘拐は決して人には言ってはいけない秘密だと感じていたのでしょうねえ。我々に対しても必死にその秘密を守ろうとしていました。あなたのつまらない意地やプライドが、ひなたちゃんの心に暗い影を作ってしまったんですよ。ましてや、犯罪まがいの誘拐など誰も幸せになりませんよ!家族のためにこれから何をしたらいいのか、あなたは必死に考えるべきです」と。

別の場面では、右京さんはある人物に「罪は暴かない方が幸せなこともある」と言われて、応戦します。

「罪という秘密を抱えたままで、本当の幸せを手にすることなど決してできないと思いますがねえ」。

右京さんは「人は犯した罪を法で裁かなければならない」信念を貫いています。その「なぜ」の答えが、2つのセリフで表現されています。

愛犬も家族の一員

この回で起きる事件は、右京さんがあぶりだした「内々の」誘拐事件です。殺人事件はありません。

金井さんが他の作品よりも「家族」の問題をストレートに浮き彫りにする過程で、ムリやり殺人事件を入れ込む必要がなかったということでしょう。

「ひねり」よりも「家族とは」。

人は秘密にしておきたいことが山ほどあるけれど、他人を苦しめる秘密は許されるものではありません。

とはいえ。

母親が誕生日に出かけたのは、犬の散歩のためでした。右京さんの推理が正しければ、志乃は公園で誘拐されています。

どうやら愛犬は、ベンチのあたりにリードをくくりつけられていたようです。

あの犬を、神田家に連れて帰ったのは誰なのか。犬がそこにいることを知っていて、無事に神田家まで連れて帰ることができる人物といえば…

この家族には、まだ救いがあるのかもしれません。