【相棒19第19話「暗殺者への招待~前篇」】ネタバレ&感想…もし上級国民がすべて悪い奴だったら?
放送開始20周年を迎えたドラマ【相棒】は、2020年の秋から2021年にかけて新シーズン【相棒19】が放送されています。
水谷豊さん扮する杉下右京と反町隆史さんが演じる冠城亘(かぶらぎわたる)が、警視庁のたった2人の特命係として事件を解決に導きます。
この記事では2021年3月10日に放送された【相棒19第19話「暗殺者への招待」】のネタバレを含めた感想などを記述しています。
(画像はテレビ朝日から引用)
第19話「暗殺者への招待」はどんな話?
今回の話の伏線は次の3本です。
《関連記事》内閣官房長官が初登場した【相棒18最終回スペシャル】
【相棒18‐20最終回「ディープフェイク…」】ネタバレあり感想…右京さんもフェイク映像をねつ造?
《関連記事》加西周明や朱音静らが初登場した【相棒19第1話&第2話】
【相棒19-初回「プレゼンス」】ネタバレ感想…加西周明は「ネオ・ジパング」で何を企む?
ドラマ【相棒19-2話「プレゼンス〜後篇」】ネタバレ&感想…「6億あげるよ」で遊ぶ上級国民??
↓
【相棒19第19話・15分拡大スペシャル「暗殺者への招待」】
2021年3月10日放送
どんな話?
『相棒オフィシャルサイト』版
麗音(篠原ゆき子)が銃撃された事件の首謀者でありながら、罪をまぬがれたIT長者の加西周明 (石丸幹二) 。背景には、衣笠副総監(杉本哲太)の“ツルの一声”や、さらに上からの“政治的圧力”があったと思われるが、うやむやのまま実行犯である朱音静 (日南響子) だけが逮捕されていた。しかも、当初は加西の関与をほのめかしていた静が、大手事務所の弁護士と接見した後、突然態度を翻し、供述の“保留”を申し出た。静の不可解な動きを耳にした右京(水谷豊)と亘(反町隆史)が真意を確かめようと動き出した矢先、加西の口車に乗って転落死した男の母親・蒔子(松永玲子)と顔を合わせる。蒔子は、息子の恋人だった静を娘のように思い、何かと世話を焼いているらしい。いっぽう、おとがめなしで自由の身を謳歌している加西の処遇をめぐっては、内閣官房長官の鶴田(相島一之)や、国家公安委員長の鑓鞍兵衛 (柄本明) も関心を寄せていた。そんな中、1年前の殺人事件で追及を逃れきった内閣情報調査室の柾庸子(遠山景織子)から、驚くべき情報がもたらされ―――さらに、思いもよらぬ出来事が加西に降りかかる…!(引用=テレビ朝日)
『テレ朝POST』版
大金で人の心を操り、犯罪へと導いていた仮想国家『ネオ・ジパング』の建国の父・加西周明(石丸幹二)。
「特命係」の杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)の手により、白バイ隊員だった出雲麗音(篠原ゆき子)の銃撃や、その事件の関係者である万津幸矢(櫻井圭佑)の転落死といった一連の事件への関与も明らかになった加西だったが、直前のところで「ツルの一声」により逮捕に待ったがかかっていた。
逮捕を止めたのは警視庁副総監の衣笠藤治(杉本哲太)。しかし右京と亘は、その背後にいる“さらなる大物の存在”を感じ取っていた。
そんな中、逮捕された朱音静(日南響子)のもとには大手弁護士事務所『エンパイヤ・ロー・ガーデン』の若手弁護士・中郷都々子(織田梨沙)が。
法曹界の一大勢力で、そうそうたる企業の法律顧問を務めるような大手法律事務所が、なぜ静のような一般市民の弁護を買って出たのか――興味をいだいた右京は『エンパイヤ・ロー・ガーデン』について探りはじめる。
おとがめなしで自由の身を謳歌している加西の処遇をめぐっては、内閣官房長官の鶴田翁助(相島一之)や、国家公安委員長の鑓鞍兵衛(柄本明)も関心を寄せていた。
そんな中、1年前の殺人事件で追及を逃れきった内閣情報調査室の柾庸子(遠山景織子)から、驚くべき情報がもたらされ―――さらに、思いもよらぬ出来事が加西に降りかかる…!(引用=テレビ朝日)
主な出演者とスタッフ
出演者
杉下右京(すぎしたうきょう)=水谷豊
冠城亘(かぶらぎわたる)=反町隆史
小出茉梨(こいでまり)=森口瑤子
伊丹憲一(いたみけんいち)=川原和久
芹沢慶二(せりざわけいじ)=山中崇史
角田六郎(かくたろくろう)=山西惇
青木年男(あおきとしお)=浅利陽介
出雲麗音(いずもれおん)=篠原ゆき子
内村莞爾(うちむらかんじ)=片桐竜次
中園照生(なかぞのてるお)=小野了
衣笠藤治(きぬがさとうじ)=杉本哲太
甲斐峯秋(かいみねあき)=石坂浩二
☆
加西周明(かさいしゅうめい)=石丸幹二
朱音静(あかねしずか)=日南響子
万津蒔子(よろずまきこ)=松永玲子
万津幸矢(よろずゆきや)=櫻井圭佑
中郷都々子(なかざとつづこ)=織田梨沙
鶴田翁助(つるたおうすけ)=相島一之
栗橋東一郎(くりはしとういちろう)=陰山泰
柾庸子(まさきようこ)=遠山景織子
鑓鞍兵衛(やりくらひょうえ)=柄本明
ほか
スタッフ
エグゼクティブプロデューサー=桑田潔
チーフプロデューサー=佐藤涼一
プロデューサー=髙野渉、西平敦郎、土田真通
脚本=輿水泰弘
音楽=池頼広
監督=橋本一
ほか
その後どうなった?(ネタバレ)
ストーリーは5か月前からスタート。加西は副総監からの鶴の一声で逮捕されなかった。甲斐峯秋によると、副総監よりもっと上の人物の力が働いているらしい。副総監は嶺秋に「おたくの若い衆」をコントロールできるか、と挑発していた。
朱音静のもとに25歳の中郷都々子弁護士が現れる。静は田巻検事の取調べに対して「リアルとバーチャルの区別がつかなくなっていたのかも」と供述保留を申し出る。
都々子が所属する弁護士事務所の三門安吾が都々子のことを気にしている。
密談だらけの3~4か月前
4か月前。三門と加西が「契約成立」を宣言する。加西が「ネオ・ジパング」を売ったのだ。
鶴田官房長官、栗橋、柾庸子が契約成立の件について密談している。
加西と鑓鞍が酒場で密談している。
右京と亘は「こてまり」で小手鞠から「どうして白バイ隊員が撃たれたのか?」と訊かれるが答えない。
3か月前。蒔子と静が接見。立ち会っている女性刑務官があくびをしている。
静は、白バイ襲撃事件における加西の関与はデタラメと供述を変えた。加西のせいにしたのは億万長者への嫉妬であると。
地検の田巻と検察事務官の七原徳治郎が何やら密談する。
弁護士が静たちを買収?
青木の調べによると、加西は「エンパイヤ・ロー・ガーデン」のクライアントだった。右京たちは静が都々子たちに買収されたと見る。「これで加西は自らのプレゼンスを消し去ることに成功した…」
では、買収はどうやっておこなわれたのか。
刑事部長が副総監にたてつく。副総監は、急に正義にめざめた刑事部長を煙たがる。刑事部長に調査を命じられた参事官は捜査一課の部屋で「なんで生き返ったりなんかしたんだ」と口を滑らせてしまい、麗音に睨まれる。
2か月前。買収の金銭授受をしていたのは、都々子に依頼された蒔子だった。都々子は蒔子に、静が書いた文字が間違いだらけの手紙を渡し、静が「あたしの過ちの中に真実があると思う」と強調している部分を指摘する。
殺し屋に狙われた建国の父
フードをかぶった男が映る。
蒔子が右京たちに「とんでもない事をしてしまった」と告白する。静のお金を使いこんだというのだ。
ここから2021年3月。右京は加西に「殺し屋があなたを狙っています」と告げる。加西は右京たちに護衛につくよう頼む。殺し屋は蒔子が闇サイトで「闇の商人」に頼んだらしい。
警視庁の地下で鑓鞍と遭遇する右京たち。右京は副総監が「おたくの若い衆」という表現を使ったことから、鑓鞍が副総監に「鶴の一声」の圧力をかけたのではないかと訊く。
鑓鞍はのらりくらりとかわし、加西が狙われている情報は内閣情報調査室による精度の高いものだと伝える。
右京と亘は内調の庸子に話を聴きに行く。3人の話を栗橋が盗聴カメラで聴いていた。
(つづく)
《関連記事》最終回はこちら
【相棒19最終回「暗殺者への招待~後篇」】ネタバレ&感想…特命係vs官房長官の行方は【相棒20】へ
感想など
もし若者を熱狂させる仮想国家の主が悪い奴だったら。もし国家公安委員長が悪い奴だったら。もし内閣官房長官が悪い奴だったら。もし「上級国民」と「下級国民」が分けられるとして、上級国民がすべて悪い奴だったら。
道楽で人殺しを依頼するIT長者?
IT長者の加西周明はお金を有り余るほど持っていました。自分が楽しめることならいくらでも大金をつぎこむ人物です。
道楽で「下級国民」に6億円の契約で人を殺させようとしました。「下級国民」は大金ほしさに白バイ隊員を銃撃します。白バイ隊員は一命を取り留めたため、6億円の賞金はチャラになりました。
右京さんたちは殺人教唆の罪でIT長者を逮捕しようとしましたが、警視庁副総監の「鶴の一声」で、男は逮捕を免れました。
悪に逆らえない中間管理職?
副総監が鶴の一声をかけたのは、国家公安委員長への忖度でした。警視庁ではナンバー2の存在でも、もっと大きな権力構造として見たら中間管理職です。副総監の保身精神がIT長者を助けました。
当初は副総監の意向に従っていた刑事部長が反旗を翻します。半グレの輩に襲われ一度死んだ身の刑事部長は、警察官としての正義の心を取り戻していました。悪に立ち向かえと、参事官に命令します。
参事官は刑事部長の命令は絶対ですが、副総監はもっと上の人物です。悪に立ち向かうも忖度するも、どちらにしても立場が危うくなります。思わず「なんで生き返ったりなんかしたんだ」と本音を漏らしてしまいます。
それを聴いた元白バイ隊員は心に憤怒を抱きました。自分はIT長者の道楽のために銃撃され、なんとか生き返ったようなものです。しかし、元白バイ隊員は我慢を選び、先輩刑事たちが悪に立ち向かうようにえーるという圧力を与えました。
内閣官房長官や国家公安委員長の真意は?
6億円を逃した「下級国民」の女は、IT長者とつながる弁護士に買収されて、IT長者の事件への関与を否定することにしました。IT長者のせいにしたのは金持ちへの嫉妬心からだと言い訳して、供述を翻します。
女に親身に接していた人物も買収工作に協力してしまいました。言われるがままに闇サイトで殺し屋を見つけて、IT長者の殺害を依頼してしまいます。
一連の動きには内閣官房長官の意向も絡んでいるようです。官房長官は内調情報調査室のメンバーを使い、IT長者が殺し屋に狙われていることを国家公安委員長に教えました。
国家公安委員長は、殺し屋の話を特命係に伝えました。
IT長者のお遊びが、社会の上のほうにいる悪い人たちに厄介事を抱えさせます。その報復として、IT長者は殺し屋に狙われています。
リアルと非リアルの境が消える【相棒】世界?
悪にもいろんな種類の人物がいます。今回の話では金や権力に絡んだいろんな悪が登場してきました。買収された女を取調べた検察官たちも、悪に1枚かんでいるのかもしれません。
供述を翻した女は「リアルとバーチャルの区別がつかなくなっていたのかも」と話していました。
この言葉にハッとさせられます。内閣官房長官、国家公安委員長、その下につく権力者…。【相棒】というフィクションを見ている、テレビのこちら側の人間が、ドラマの中で起きている事象を現実と重ね合わせて「本当は裏でこんなことが起きているのかもしれない」と疑心暗鬼になってしまうほどの今回。
その要因はIT長者を演じる石丸幹二さん、内閣官房長官を演じる相島一之さん、国家公安委員長を演じる柄本明さんらの演技が圧倒的なリアリティを伴っているからでしょう。
悪は悪でも、腹の中で何を考えているのか見えてこない人たち。狐の化かし合い。人を利用してのさばってきた人物たちの生存競争。そんな人たちにとっては悪は一元的ではなく、そこに正義を重ねているのかもしれません。
最終回で正義は勝てるのか?
【相棒】の世界を悪人だらけに仕立てあげつつも、わかりやすい悪の象徴のような存在だった刑事部長を正義ターンさせた輿水泰弘さんの脚本はお見事としか言いようがありません。
【相棒18】の最終回から続く時間軸を、次回の【相棒19】最終回でどこまで回収してくれるのでしょうか。
悪が悪いほど輝くのが特命係の2人です。右京さんと冠城亘は、最終回で悪をどこまで暴き、悪人に罪をつぐなうチャンスを与えることができるのか。
化かし合いの勝者は誰なのか、あるいは悪が全員こらしめられるのか。
完全帳の一筋縄では終わらない【相棒】だけに、予測不可能。
最終回を前に、ワクワクが止まりません。