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【相棒19第6話「三文芝居」】ネタバレ&感想…人は表の顔を隠し演じて生きている??

放送開始20周年を迎えたドラマ【相棒】は、2020年10月から新シーズン【相棒19】が放送されています。

 

水谷豊さん扮する杉下右京と反町隆史さんが演じる冠城亘(かぶらぎわたる)が、警視庁のたった2人の特命係として事件を解決に導きます。

 

この記事では2020年11月18日に放送された【相棒19第6話「三文芝居」】のネタバレを含めた感想などを記述しています。

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第6話「三文芝居」はどんな話?

【相棒19第6話「三文芝居」】

2020年11月18日放送

どんな話?

マンションの敷地内で電子部品メーカーに勤める派遣社員の男性が死亡する事件が発生。通報者は、出張風俗店のドライバーで、たまたまマンションに店の女性を送り届けたという松野(橋本じゅん)と名乗る男性。松野によると、被害者と首筋にドクロのタトゥーがある金髪の男が揉めていて、「鈴木」と呼ばれた金髪の男が鞄を奪って逃げ去るのを目撃したという。捜査一課は、被害者の勤務先をかんがみて“機密情報”に絡んだ殺人事件とにらんで捜査を進める。いっぽう、独自の捜査に乗り出した右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は、松野の目撃証言に不審なものを感じ、関係者に事情を聞く。すると問題の夜、松野が仕事を休んでいたことが判明。亘が厳しく追及するが、元劇団員だという松野は、突然シェイクスピアの芝居を演じ始めるなどして煙に巻く。そんな中、一課はドクロのタトゥーがある半グレ上がりの鈴木という男を逮捕。男は、被害者から闇金の借金を回収していたことを認めるが…!?

(引用=テレビ朝日)

主な出演者・スタッフ

出演者
杉下右京=水谷豊
冠城亘=反町隆史

小出茉梨=森口瑤子
伊丹憲一=川原和久
芹沢慶二=山中崇史
角田六郎=山西惇
青木年男=浅利陽介

出雲麗音=篠原ゆき子

益子桑栄=田中隆三

松野優太=橋本じゅん

山田みなみ=柳ゆり菜

庄司光則=加藤満

ほか


スタッフ
エグゼクティブプロデューサー=桑田潔
チーフプロデューサー=佐藤涼一
プロデューサー=髙野渉、西平敦郎、土田真通
脚本=瀧本智行
音楽=池頼広
監督=権野元
ほか

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(画像引用=テレビ朝日)

その後どうなった?(ネタバレ)

ドクロのタトゥーがある男は鈴木真治という半グレでヤミ金や裏カジノに関わっており、死んだ西島はカモだった。鈴木は取調室で自分がカモを殺す理由がないと主張する。

松野が劇団を辞めた本当の理由は?

松野に前科があることが判明した。松野は地面師グループが有浜不動産から30億円を搾取した詐欺事件に関わり2年6か月の懲役を受けていた。

 

西島が勤務していた日栄電算という会社の近くの防犯カメラに、西島に土下座する松野の映像が映っていた。その直前には西島が鈴木に詰め寄られる映像もあった。

 

右京さんと亘は、松野の通話履歴をたどり松野が所属していた「やぐら座」という劇団の庄司光則という演出家に話を聞く。松野は出所したら劇団に戻ってやり直すと張り切っていたという。しかし、3か月ほど前、松野は自分が直接だました詐欺の相手が自殺していたことを知り、役者を辞めてしまった。

 

右京さんは取調室で松野に「あなたはこの瞬間も芝居を続けていますね?」と問いかけると、「さすがシェイクスピアのセリフをソラで言えるお人や。全部お見通し」と前置きして「参りました。西島を殺したのはワシですわ」と自白する。

 

松野が言うには、西島とは立ち飲み屋で出会ったという。意気投合し親近感がわき、西島がギャンブルでヤクザから100万円借金していると聞き、貸した。その金を返して欲しいと土下座して頼んだのだが「今ヤミ金に脅されてんの見ただろ。ムリ」と言って返してもらえなかった。その晩に西島のマンションに出向きもう一度返済を頼んだが断られて、カットして西島を殺し、西島のパソコンを川に投げ捨てた…と言うのだ。

復元した動画に映っていた女は…

サイバーセキュリティ課の青木が西島のパソコンから映像を復元した。そこには半裸の西島と女性の姿が映っていた。

 

女性は出張風俗「スイ〜トパイパイ」のレイナ。レイナは西島が勤務していた会社の派遣社員である山田みなみだった。不動産会社の自殺した担当者の名前は、山田俊彦。山田みなみは山田俊彦の娘だった。

 

以前、右京さんたちが西島の会社を訪れた際に、社員が別の人物に「レナさん」と声をかけた時にみなみが振り向いたのを右京さんが覚えていたのだ。

 

みなみは平日はオフィスで派遣社員として働きながら、週末は「スイ〜トパイパイ」で副業をしていた。

出張風俗しているとバラすと脅迫

3か月前、山田俊彦の自殺を知った松野は、罪の意識から遺族に謝罪しようと、山田みなみの存在をつきとめたが、謝罪できなかった。

 

みなみが「スイ〜トパイパイ」に勤務していることを知り、店の送迎ドライバーとなった。松野の大阪弁にみなみが「私も大阪」と打ち解けて、2人は仲良くなる。

 

みなみが西島の部屋に行ったのは半年くらい前。みなみはたいていの客の顔は覚えていなかったが、西島はみなみの顔を覚えていた。

 

1か月前に派遣された会社でみなみを見つけた西島は、盗撮動画をネタに100万円をゆすった。

 

みなみは100万円を支払ったが、西島はゆすりを一度で終わらす気はなかった。

 

松野はその様子をこっそり見ていた。

松野は身代わりになる決意をした

松野は鈴木に脅された直後の西嶋に会社の前で土下座して金は用意するからとみなみの窮地を救おうとしたが、西島は取り合わない。

 

その夜、もういちど頼もうと西島のマンションに向かうと、みなみが西島を殺害する場面を見てしまった。

 

松野は自分が身代わりになる事を決意して、みなみを逃げさせた。

 

亘は「目撃者は疑われる。怪しい人間ならなおさら。1度は否認してしばらくしてから罪を認めれば信ぴょう性が増す。証言通りに奪ったカバンとパソコンが出てくれば、犯人が別にいるとは誰も思わない。あなたはそう考えた。たいした役者だ」と振り返る。

 

松野は「あの子の人生を狂わしたのはワシや。ワシが殺したちゅうことでええやないかい」と懇願する。

 

しかし右京さんは「いいえ。あなたの罪は犯人隠避と証拠隠滅だけです」と言い放つ。亘は「山田みなみは今もあなたに感謝している」と言い添える。

 

松野はシェイクスピアのマクベスのように、その場にガックリと崩れ落ちた。

感想など

自分が殺したも同然の人物の娘が人を殺してしまい、身代わりとして犯人になろうとした男。その「三文芝居」は右京さんに見破られてしまいましたが、この社会で人が「演じる」とはどういうことか深く考えさせられました。

人はみな役者で普段から演じている?

劇中で、シェイクスピアの『お気に召すまま』という喜劇のセリフを、ゲスト主人公の松野が語ります。

 

「この世は舞台。人はみな役者」と。

 

演劇は、観客に対して俳優が見せる芸術のことを言います。その舞台では演技が披露されます。

 

いっぽうで、私たちは普段の社会生活の中でも演技をしている場合があります。

 

「友達に嫌われないようにおっちょこちょいなキャラを演じている」というような場合。あるいはネットやSNSの中だけの特別な自分。

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他者と接する際にとる自分の行動は演技なのではないか。それは相手も同じなのではないか。この世に生きるすべての人は役割を演じているのではないか。世界とはひとつの劇場なのではないか。

 

もし自分が演じている役割が自分の想像とかけ離れていたら、負担になってしまいます。そうならないように、なるべく自然体でありたいものです。

 

役者で生計を立てていこうとする者も、役を演じている時とは違う、素の自分があります。役者の仕事場は舞台です。与えられた役を舞台で演じて、観客に披露します。

 

しかし、ある事件をきっかけに、松野は演劇の役を演じるのではなく、この世にいる松野優太という人物を演じることを心に誓います。

謝罪できずに「大阪のおっちゃん」を演じて

松野の最初の間違いは、詐欺事件に手を出してしまったことでした。地面師グループが不動産会社から30億円も搾取するという事件でした。

 

主犯格から芝居経験とナチュラルな関西弁を見込まれてスカウトされたようですが、松野が手にした報酬は200万円ほど。懲役2年6か月の実刑を受けて、悪いことをしてはいけないと身にしみたことでしょう。

 

服役後は「やぐら座」でもう一度、役者を志すつもりでした。しかし、自分が騙した山田俊彦という人物が自殺していたことを知ってしまいました。

 

山田は自分のせいで命を絶ったのだと、松野は強く後悔しました。

 

自分が「地主の息子」を演じきったことで相手は騙され、巨額の詐欺が成立してしまったことを振り返れば、自分にはもう人からお金をとって芝居を見せることなど許せなくなってしまったのかもしれません。

 

松野は山田の遺族に会いに行きました。しかし謝罪することができません。俊彦の娘が出張風俗で働いていることを知り、送迎ドライバーとなって、気のいい大阪弁のおっちゃんを演じることになりました。

 

謝罪の言葉を口にできぬまま、みなみが脅迫されていることを知り、さらに殺人事件の犯人となってしまう現場を目撃してしまった松野は、自分が身代わりとなって、回りくどいやり方で犯人となる芝居を演じる覚悟を決めました。

 

山田みなみの人生は自分がぶち壊してしまったと思っている松野にとって、そうするしかなかったのでしょうか?

しんどくても楽しそうに演じて夢を見せ

今回の話は松野優太だけでなく、もう1人、山田みなみの哀しい人生について深く考えさせられる内容です。

 

こてまりさんは右京さんと亘に言います。

 

「男にはわからないでしょうねえ。人前じゃ楽しそうに振舞って、裏じゃ必死にもがいてる女の気持ち」

 

松野は「スイ〜トパイパイ」で働く女性を「キャスト」と呼びます。

 

「あの子らもそれぞれシンドい事情を抱えてるんですわ。それを腹の奥に隠して、仮面を被って、つかの間客に夢を見させてやる。せやからキャスト」

 

この2つのセリフからは、本来の自分とは違う自分の姿を演じてみせる女性の内面の複雑さが見えてきます。

 

キャストとドライバーという関係となり、松野の大阪弁を聞いて打ち解けるようになったみなみが「仕事行きたないけど、行かなしゃあないね」と一瞬だけ寂しそうな表情を見せたシーンも印象的です。

 

もちろん、風俗の仕事に誇りを持って働いている人もいます。しかし、他にどうすることもできなくて風俗の仕事を選ぶ人もいます。

 

キャストとして客に夢を与える人物を演じなければいけません。相手を満足させるためには相応の演技力も必要です。「演じる」という言葉の奥深さが伝わります。

 

山田みなみは、表の社会では絶対に会いたくない、かつての出張風俗の客と、派遣先の会社で遭遇してしまいました。

 

相手は盗撮動画をネタに揺すってきました。一度お金を払っただけでは解放されませんでした。もうすぐ正社員になれるのに。

 

なんで私はこんな人生を…

芝居とは、だますための作り事?

脅迫男を死なせてしまったみなみに、松野は身代わりを申し出ます。

 

「ワシなんかこの先生きようが死のうが似たようなもんや。だがあんたは違う。これからええことがぎょうさん待ってる。あんたの人生の幕はこれから開くんやで」

 

この頃には松野の心に、劇場の舞台ではなくこの世の舞台で、これからの自分を演じる覚悟が決まっていたのでしょう。

 

その心に甘えてしまったみなみもまた、人を殺した真実を隠して生きる役割を背負ってしまいました。

 

犯罪を隠すことは許されません。松野は犯人隠避と証拠隠滅の罪に問われました。

 

では、どうすればよかったのか。

 

当然、みなみが脅迫男を死なせてしまった時に、その事実を警察に話すべきでした。

 

「あんた刑務所で2年6か月、何を学んできたの?」と言ってしまえばそれまでです。

 

「芝居」という言葉の意味を検索したら「演劇。また、それを演ずる小屋」とともに「だますための作り事」という意味が出てきました。

 

松野が殺人犯を演じ続ける行為は、人をだますための作りごとです。松野が本来めざしていた「芝居」は、人をだますためのものではないはずです。自分は何を演じたくて芝居をやっていたのか…

 

しかし、みなみの父親を自分が死に追いやらせたことが原因で今があると考えると、松野はこれ以上、みなみにつらい思いをさせるわけにはいかなかったのでしょう。

 

もし松野が右京さんに出会わなければ、彼の目論見通りになったかもしれません。その芝居で多くの人を騙すことができたかもしれません。

 

それでよかったのかどうか。よくありませんね。

ドラマが終わっても消えてしまわない余韻

「消えろ消えろ、つかの間のともしび。人生は歩き回る影法師。あわれな役者だ」

 

シェイクスピアの「マクベス」のセリフを語りながら崩れ落ちた松野。

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(画像引用=テレビ朝日)

「舞台の上で大げさに見栄を切っても、出場(でば)が終われば消えてしまう」

 

と続きを述べて介錯した右京さん。

 

演じるとはどういうことか。素の自分とは。生きるとは。

 

出場が終わっても余韻を消えないようにするのが、見て心を動かされた視聴者の役割のような気がします。

 

「三文芝居」とは、価値のない下手な芝居、またはいかにも下手な演じ方、などを指す言葉です。

 

この「いかにも下手な演じ方」の類語は「ベタな演技」「クサい芝居」「大袈裟な演技」などです。

 

松野優太を演じたのは劇団☆新感線のバリバリのメイン俳優でテレビドラマでは名バイプレーヤーの橋本じゅんさん。

 

めっちゃうまい。ベタでクサくて大袈裟な三文芝居をする役者の役をする橋本さんがめっちゃうまい。そこには三文芝居のカケラもありません。

 

山田みなみ役の柳ゆり菜さんも素晴らしかった。脚本は今回が【相棒】初登場となる瀧本智行さん。脚本と俳優を生かしきった権野元監督。

 

知られたくない秘密を隠して必死に生きようとする人々の哀しい話でした。

声に出して読みたい右京さんのセリフ

(松野の「この世は舞台。人はみな役者や」というセリフに対して)

「おや、シェイクスピアですね。『お気に召すまま』第二幕第七場の有名なセリフです。続きは確か『人はみな舞台に登場しては退場してゆく。その時、さまざまな役を演じるために』。確かに人は誰かに与えられた役を演じているだけなのかもしれませんねえ」

 

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