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【相棒17第6話「ブラックパールの女」感想】もし右京さんが「平成の毒婦」の手駒にされたら。

この記事では、2018年11月21日に放送されたテレビドラマ【相棒17第6話「ブラックパールの女」】の感想などを述べています。

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来たぞ女性脚本家回!

【相棒】といえば、登場人物の大半が男社会の刑事ドラマです。脚本家も男性陣がズラリ。しかし近年は女性の脚本家さんが担当する回が増えてきました。

女性作家さんが描く作品には、とくに女性視聴者層の共感を呼ぶ名作が名作が何本もあります。

【相棒】の女性作家といえば【相棒8】から参加している太田愛さんが有名です。【相棒16-3「銀婚式」】では、銀婚式を間近に控えた妻の心模様が繊細に描かれました。菊池桃子さんがハマり役でした。

太田さんだけではありません。

今回の【相棒17-6「ブラックパールの女」】の脚本を担当したのは山本むつみさんです。

山本さんはNHKのドラマ「ゲゲゲの女房」や「八重の桜」などの感動作を世に送り出した実力派。人情味あふれるストーリーは見応え充分です。

父親の衣笠副総監に反発する女子中学生の心の揺れ動きを濃密に描いた【相棒15-11「アンタッチャブル」】や、男に乱暴される被害に遭っても声を上げられずに苦しまなければならなかった女性の悲しみがあふれる【相棒16-12「暗数」】。ゲスト主人公の女性に涙を誘われます。

では「ブラックパールの女」は、どんな話だったのでしょうか。

女詐欺師の目的は?

谷岡というバイオ技術の研究者が、自宅の浴槽で溺死しました。警察は、事件性はないと判断するのですが。

右京さん(水谷豊さん)は、弁護士の連城(松尾愉さん)から、奇妙な依頼を受けます。

連城が顧問弁護士を務める出版社が、連続殺人事件の被告として拘禁中の遠峰小夜子(西田尚美さん)に名誉毀損で訴えられているのですが、遠峰小夜子が和解の条件として「有能な刑事と話がしたい」と要求してきたというのです。

遠峰小夜子は、面会に来た右京さんと冠城くん(反町隆史さん)に、海外に行く飛行機の中で谷岡と知り合ったと話します。谷岡に、若い女性へのプレゼント用に真珠のネックレスを紹介したと。

右京さんは、遠峰小夜子がなぜ、わざわざ刑事を呼んで谷岡と真珠の話をしたのかが気になり、谷岡死亡の事件を調べ始めます。

谷岡は、何者かによって殺害された?

右京さんを「使う」

ゲストの遠峰小夜子は、今回の事件の真犯人ではありません。真珠養殖詐欺をおこない、返金を迫った容疑者を自殺に見せかけて殺害した容疑で、一度は死刑判決が宣告され、現在は控訴中です。

彼女はなぜ拘置所の中から、天才刑事を使って谷岡殺害事件の真犯人を暴かせようとしたのか。

【相棒】では過去にも、事件の真相を明らかにするために右京さんを「使う」人物が何人も登場しています。

【相棒4-8「監禁」】では、金庫を開けるために「和製シャーロック・ホームズ」と呼ばれる右京さんを使おうとする女性犯罪者を、佐藤江梨子さんが演じていました。

【相棒劇場版1】の犯人の男は、政府の嘘を国民にさらすために、猟奇連続殺人事件を起こし東京ビッグシティマラソンにも罠をしかけ、右京さんたちに謎を解明させます。

【相棒7-15「密愛」】では、右京さんの大学時代の恩師(岸惠子さん)が、自分の邸宅で起きた事件について調べさせています。

他にも、警察の人間ではない誰かが、右京さんが真相を明らかにするように仕向ける回がありました。

しかし、今回の遠峰小夜子は、過去の人たちとはちょっと違いました。ゲームを楽しんでいるかのように不敵な笑みを浮かべて右京さんと冠城くんを動かし、事件の解決後には「あの2人、使える…」とつぶやいていました。

この女の真の狙いは何なのか。続編がありそうです。

遠峰小夜子が謎のまま終わった一方で、谷岡を殺害した真犯人の女性は、不幸な誤解の末に、殺人事件を起こしてしまいました。感情を見せない小夜子と、感情に負けて人を殺してしまった女性の対比も、脚本の妙でした。

山本むつみマジック炸裂

右京さんは、遠峰小夜子に相貌認識能力があることを見抜きました。相貌認識能力があると、一度見た顔は忘れないそうです。

「相貌」という言葉で連想するのは、今回と同じ山本むつみ脚本で描かれた【相棒16-9「目撃しない女」】です。

「目撃しない女」のゲスト主人公・新崎芽依(朝倉あきさん)は相貌失認という認知機能障害の症状がありました。人の顔を覚えられないのです。殺人事件の犯人を目撃していたのですが、それが誰の顔だか、覚えられませんでした。

芽依は、人の顔を覚えられないことで、子供の頃から劣等感を抱えていました。

それでもキッチンカーを運転し、元気にタコライスを作って販売していました。懸命に生きている姿が伝わってきました。

遠峰小夜子は、芽依とは対照的に、相貌認識能力を犯罪に利用して、したたかに生きていました。

一度覚えた顔を忘れない女は、マークした男性に近づき、自分のことをわかってくれる運命の女性に出会ったと勘違いさせて、お金をむしり取っていたのです。

ドラマの中で、月本幸子(鈴木杏樹さん)は、真珠について「清楚なように見えるけれど、光の加減で輝きが変わる艶めかしさもある」と表現しました。

ブラックパールの女。

右京さんは冠城くんに「彼女には迂闊に近づかないように」と釘を刺しました。

【相棒】ワールドに現れた「平成の毒婦」が、また登場することはあるのかどうか。

「この先はどうなるんだろう」と想像を膨らませてくれる、素晴らしい話でした。山本むつみマジック、炸裂です。

 

【相棒17第6話「ブラックパールの女」】

2018年11月21日放送

脚本=山本むつみ

監督=権野元