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【相棒17第3話「辞書の神様」感想】職人たちの哀しい物語を描く名作だ!

この記事では、2018年10月31日に放送されたテレビドラマ【相棒17第3話「辞書の神様」】の感想などを記述しています。

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やばい、面白すぎる

面白かった!

今回の話は【This is aibou!】と叫びたくなるほど【相棒】シリーズの魅力が凝縮された作品でした。

第3話「辞書の神様」は【相棒】を今回初めて見た人も、【相棒】シリーズを放送開始から楽しんでいる人も、満足のいく内容だったのではないでしょうか。

まずはストーリーを追いかけてみましょう。

東京都大田区にある公園で『千言万辞』という辞書を担当する編集者の中西が、ペーパーナイフでメッタ刺しにされた遺体で発見されます。中西が勤務する文礼堂出版という会社では『千言万辞』と『文礼堂国語辞典』の2つの辞書が発行されていました。

『文国』は一般的な学習をするための辞書。『千言万辞』は読み物として愛される辞書。

『千言万辞』を愛読している右京さん(水谷豊さん)は事件に興味を持ち、冠城亘(反町隆史さん)と共に独自の捜査を開始します。

『千言万辞』の原稿は元大学教授の大鷹(森本レオさん)が1人で手がけているのですが、中西とは折り合いが悪く、大鷹をサポートする国島(森田順平さん)という大学教授に主幹を切り替える話が持ち上がっていました。

周辺の人物に事情を聴くと、事件当夜の公園に国島が姿を見せていたことが判明します。

取調室で罪を告白する国島。

しかし右京さんたちは、国島が誰かをかばっていることを見抜きます。その人物は大鷹か?

すると今度は、大鷹が自首してきて…。

初期の名作を思い出す

今回のゲスト主人公は、偏屈な「辞書の神様」こと大鷹を演じる森本レオさん。

レオさんは2002年の【相棒1-11右京撃たれる 特命係15年目の真実】で右京さんを狙撃した石嶺小五郎役で【相棒】に登場したことがあります。続く【相棒1最終話「午後9時30分の復讐 特命係、最後の事件」】にも顔を出したレオさんの【相棒】出演は約16年ぶりです。前回の堅い警察官の役から、今回のアクの強いじいさん役へのチェンジ。どちらも「はまり役」として受け入れられました。

レオさんが出演したシーズン1の頃の【相棒】は、その回ごとに取り上げられるジャンルと真摯に向き合っていました。

【相棒1-3「秘密の元アイドル妻」】では落語を大切にする落語家。【相棒1-7「殺しのカクテル」】ではオリジナルのカクテルに愛情を注ぐバーテンダー。【相棒1-10「最後の灯り」】では映画を愛するその道30年の電飾さん。

今回の「辞書の神様」は、言葉の魅力に取り憑かれた元大学教授の物語。辞書の製作が生きがいです。その道を大切にする職人の姿がていねいに描かれる、初期の【相棒】の醍醐味が復活しました。

前述のシーズン1の各話は、ゲスト主人公の職人たちがやむにやまれず犯罪に手を染めてしまう過程が哀しく描かれましたが、「辞書の神様」の場合は、ゲスト主人公が犯人かと思わせておいて、さらに「ひとひねり」がありました。

絶妙な「ひとひねり」

「辞書の神様」に素直に「面白かった!」と言えるのは、視聴者の想像を超える「ひとひねり」がうまくハマったからです。

大鷹は急にかんしゃくを起こしたり、そうかと思えばまんじゅうを食べてご満悦になったりと気難しい一面を見せるのですが、その点に引っかかった右京さん。

付箋に印鑑の管理場所やリモコンの使い方を書き出して貼りつけてあるのを見つけて、大鷹がアルツハイマーであることを見抜きます。

アルツハイマーのくだりは【相棒7-17「天才たちの最期」】にも出てきました。死んだ若き天才詩人の安原の部屋には、至る所にメモが貼られていました。詩のヒントになる言葉の断片や思いついたアイデアなどに混じって、日常の忘備録や買い物リストなども貼られていました。また、文机の引き出しには未開封の歯ブラシや、同じ種類の文房具が大量に買い揃えてありました。安原は若年性のアルツハイマーで、物忘れがひどくなり、そのためにメモを多用し、また、購入したことを忘れて日用品を大量に買いだめしていたのです。

大鷹の部屋に付箋が貼りまくられていたシーンを目にして「天才たちの最期」を思い出した【相棒】ファンが多数いることでしょう。これだけだと「10年前の再放送かよ」とあきれられてしまいそうですが、今回の「辞書の神様」では、この後さらに、大鷹がアルツハイマーだからこその哀しいストーリーが待ち受けています。ここにも「ひとひねり」があるため、目の肥えた【相棒】ファンにも新鮮な驚きがもたらされます。

神森万里江脚本の今後に期待

『千言万辞』の「常識」の項。「平凡でつまらない価値観。新しいものを好み、古いものを拒む。今これを読んで不快に感じているあなたのこと」なんて書かれています。右京さんが読み物として愛好するのもうなずける、辞書らしくない説明です。

この「常識」が、事件の犯人による犯行の動機でした。真犯人もまた、別の立場で「辞書」を愛していました。

出版業界に住む人々による葛藤の末の殺人事件というと【相棒6-7「空中の楼閣」】が思い出されます。「空中の楼閣」の真犯人と「辞書の神様」の真犯人は、どちらも自分の仕事にプライドを持っていました。自分が手がけた作品を盲目的に愛し、その作品が闇に葬られてプライドがねじ曲げられ、犯行に及んでしまいました。

どんなにつらい現実にさらされたとしても、犯罪という愚かな手段に頼ってはいけないのです。より良く懸命に生きることで、道は開けます。

「辞書の神様」のゲスト主人公は、真犯人が逮捕されたことで、自分をかばって自白までしてくれた弟子との愛を確かめ、連名で『千言万辞』の新版を発行することができました。

「辞書の神様」の脚本は、今回が【相棒】デビューとなった神森万里江さんが手がけました。一本目から【相棒】ワールドの魅力を完ぺきに引き出す作品を披露してくれました。次回作が楽しみです。

この記事では【相棒】の初期の作品をいくつか紹介しました。【相棒17】を見て、初期の名作を思い出すことができ、かつ名作を超える感動を与えられるという、これ以上の喜びはありません。

「辞書の神様」は、間違いなく【相棒】史上で語り継がれる名作のひとつとなるでしょう。

 

【相棒17第3話「辞書の神様」】

2018年10月31日放送

脚本=神森万里江

監督=権野元

 

《次回は↓》

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