見れば号泣の小学生回【相棒2-13「神隠し」】7歳の自作自演偽装誘拐!
小学生の女の子が主役の超号泣回名作【相棒2第13話「神隠し」】の感想などを述べていきます。
着衣で作った暗号とは
【相棒2第13話「神隠し」】は2004年1月21日に放送されました。
最初の部分のあらすじを振り返っておきます。
小学生の大森瑠奈が、学校からの帰宅途中に姿を消しました。営利目的の誘拐ではなさそう。瑠奈が通っていた道には、彼女が身につけていたと思われる物が暗号のように置かれていました。
理髪店の看板に帽子。倉庫の扉の取っ手にマフラー。小さな祠の稲荷像には手袋。パチンコ屋さんの店先にはサスペンダー。絵画教室のポスターには靴下が。
これらはいったい何のメッセージなのか。瑠奈はどこに消えてしまったのか。
冒頭から謎が詰め込まれています。
ストーリーは二転三転し、最後には号泣必至で「相棒すげえ!」と叫びたくなります。
家庭内暴力と浮気
瑠奈の心は揺れていました。
父親は母親に家庭内暴力を振るう。母親は同級生の父親と浮気。外に出れば仲のいい夫婦であり、微笑ましい親子に見せかけています。
瑠奈には、真実がどこにあるのか、わからなくなってしまいました。家の中と外の、違う世界に。
大切な娘がいなくなる恐怖を味わえば、お父さんもお母さんも心変わりをしてくれるかもしれない。瑠奈は儚い願いを抱いて、自分から家を出る決意を固めました。
7歳の女の子による、自作自演の偽装誘拐です。
殺人も死もない安心
物語は登場人物の心の動きが自然なほど、視聴者の心に染み渡ります。
なぜ7歳の女の子が家出をしたのか。ストーリーが進むに連れて次第に明らかになる真相。この回は少女の葛藤がストレートに伝わってきます。
最後に涙無くして終わらないのは、殺人や人の死が絡んでこないこと。事件と言えるのは少女の家出くらいです。
推理も瑠奈の着衣が5箇所に置かれていた謎を右京さんが解明する程度で、あとはヒューマンドラマに徹しています。
子供の繊細な心の動きを追うだけでひとつの作品ができあがり、余計な事件は必要ない。輿水泰弘さんの脚本が徹底しているシンプルさが、最後の感動を引き出してくれています。
俳優さんが大ハマリ
この作品ではゲストの役者さんの名演技無くしては語れません。
ホームレスの吉田一郎は松尾貴史さん。【相棒13「ファントムアサシン」】の冒頭で右京さんに馴れ馴れしく声をかけるホームレスに「この人誰だよ」と思った人もいたと思います。あの一郎さんの初登場が「神隠し」でした。
教会の神父役は細川俊之さん。独特の言い回しで存在感バリバリです。
一郎さんも神父さんも瑠奈の味方として、彼女の「神隠し」を援助していました。2人は大人として、瑠奈がどうすればよいのかをしっかりわかっています。
瑠奈の居場所が両親にバレて、連れ戻しに来ると、瑠奈は拒否します。
しかし一郎さんも神父さんも、そして右京さんや亀山くんも、大人として、瑠奈がどんな選択をすれば良いのかを考えさせます。みんな優しすぎます。見ていて号泣しましたよ、ここ。
やさしさあふれる右京さん
【相棒】は小学生や10代の若年層がゲスト主人公となる際に、彼らが胸の奥に抱えている「他人には言えないこと」への悩みを視聴者に訴えかけてきます。回ごとに脚本家が変わっても一貫しています。そこには右京さんのやさしい眼差しがあります。
たとえば小さな少年少女と話をする時、右京さんはほぼ必ずしゃがんだり背を丸めて、目の高さを子供と同じにします。小さなやさしさが、やがて最初は頑なだった彼らの心を開かせていきます。
右京さんは《相棒ワールド》で「人は犯した罪を法で裁かれなければならない」信念を貫いています。
ところがたまに、今回のような「法で裁かれなければならない」事件が出てこない回があります。
そんな時にクローズアップされるのが、右京さんの「心」です。【相棒】は冷静冷徹な右京さんと熱血漢の亀山くんの物語ですが、右京さんだって人間です。心があります。右京さんは「この世界から犯罪を無くす」という壮大な夢を抱いています。そんな日が来ることを信じています。
壊れた心を修繕する勇気
私たちはフィクションのドラマを見て、さまざまな感動に浸ります。
瑠奈がなぜ自分から消えようとしたのかを、大人としてしっかりと受け止めることで、自分のこれからの人生に生かすことができます。【相棒】の良心が詰まった回となった「神隠し」。
右京さんは瑠奈の両親に言いました。
「無理に連れ戻したところで、また同じことを繰り返すだけです。あなた方が変わる努力をしなければ、お嬢さんは戻りませんよ。いえ、戻っても、心はどんどん遠くへ行ってしまうでしょう」
「これを機会に壊れたところを修繕しませんか。部屋も、それから家族も」
人は、やり直せる。そのためには「そもそも」の部分を振り返り、そこから正しい道を選びなおす作業が必要です。
簡単な作業ではありません。しかしそのまま目を瞑っていたら。
今度は自分が、神隠し。
【相棒2-13「神隠し」】
出演=水谷豊、寺脇康文、細川俊之、松尾貴史、久保結季
脚本=輿水泰弘、監督=大井利夫