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節約の裏ワザが主婦に流行した頃【相棒4-18「節約殺人」】で悲劇が!

日々の生活で1円でも節約したい、という気持ちが殺人事件にまで発展してしまったら…この記事ではドラマ【相棒4第18話「節約殺人」】の感想などを述べています。

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節約主婦の正当防衛?

おもしろい!めちゃくちゃおもしろいです、この回。そして考えさせられます。

まずは公式のあらすじを振り返ってみます。

《節約主婦としてマスコミで人気の宣子が人を殺したと通報してきた。自宅で夫の真澄が殺され、その犯人の浅田を正当防衛で殺したとのだという。同じ頃、香織という若い女性の死体も近所で見つかり、香織を殺害した浅田を真澄が脅迫したために反撃されたとの見解が浮かぶ。》

このあらすじを読んで、私は一度で頭に入らなかったので、見解を時系列で追ってみます。

浅田が痴情のもつれで香織を殺す。

それを松原真澄が見ていた。松原真澄は浅田を脅迫する。浅田は真澄を殺害する。そこに帰ってきた松原宣子が正当防衛で浅田を殺した。

しかしこの見解は的外れに終わります。

裏ワザが社会的ブームに

この回のゲスト主人公・松原宣子を演じたのは伊藤かずえさん。松原宣子は「節約のプロ」としてテレビやDVDに登場したり、雑誌に節約術が掲載されたりしています。

「ストッキングを買ってきたら、そのままひと晩冷凍庫に入れておくだけで伝染しにくくなる」

から始まって、松原宣子の節約術が次々に紹介されていきます。

「節約殺人」が放送されたのは2006年2月22日。社会では節約術が「裏ワザ」として紹介され、ブームとなっていました。「伊東家の食卓」というテレビ番組は毎回高視聴率でした。流行をいち早く作品に取り入れるのが【相棒】のリアル感です。

劇中で【花の里】のたまきさんが、隣町のスーパーから帰ってくるシーンがあります。近所のスーパーよりキュウリが3円安かったとか。右京さんは呆れます。

「隣町のスーパーまで歩いて15分はかかりますよね。往復で30分。3円のために30分を使う。これを時給に換算すると6円ですねえ。効率のいい行動とは思えませんが」

普段の生活に困っていない人の正論で、右京さんは全国の庶民派主婦を敵に回してしまいました。

殺人がいちばんのムダ遣い

「節約」とは「費用・使用量をできるだけ減らすこと」です。電気代や時間などで「節約が大切」とよく言われます。

いわゆる「セーブ」です。

セーブの度合いが増すと「カット」になります。「ある部分を取り除いて減らす」こと。

「節約する」と「削る」はよく似た言葉です。

「食費を節約する」と「食費を削る」だと、同じような意味に感じます。

では、対象が人だったら。その相手が旦那だったら。自分に与えられた状況を利用して旦那を殺すのは、節約ではなくて、削る行為です。

宣子と右京さんはこんな会話を交わします。

「でも、私、不思議なほどちっとも後悔していないんです。だって、私の人生でいちばんムダだった夫を節約できたんですもの」

「そうでしょうか?しかし、こうも言えませんか?殺人こそがいちばんのムダ遣い。もったいない行為だと思いますがねえ。一瞬にして人生が終わってしまうんですから。殺したほうも、殺されたほうも。あなたは人生でいちばん大きなムダ遣いをなさったと僕は思いますよ」

お得のために未来を潰す

節約術を使うことで、少しでもトクしたくなります。私も100円ショップで買い物をして節約をするのが大好きです。

私の場合は、マジで生活が苦しいので、お金の節約が命綱になっています。

節約術というのは「うまく」生きていくうえで大事になる要素です。ある部分での出費や使用量を抑えながら、自分が必要とする別の場所に投資する場合もあるでしょう。 

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(画像引用=テレビ朝日、東映)

右京さんが言う「殺人こそがいちばんのムダ遣い」というのは、宣子の行為が「節約」ではないから。節約は、未来に生かされた時に効果を発揮します。しかし、その行為によって未来を潰してしまう行為は、節約でもなんでもありません。ましてや、他人である旦那を殺すとは、節約の意味を勘違いしてしまっています。

渋谷までの30円の電車賃を浮かすために一駅分歩く。素晴らしい節約術です。往復で60円。月20日利用するとして、1200円の節約です。

節約のプロとしてマスコミに引っ張りだこになるうちに、生きるために節約する自分から、節約のために生きる自分になってしまっていた松原宣子。

節約はほどほどに

浅田が香織を殺害する現場を偶然見てひまった松原宣子。ここが彼女の分かれ道でした。

その場ですぐに警察に通報していれば。

家に帰ったらダメ旦那がテレビのバラエティ番組を見ながら爆笑していて、許せない。

この状況を誰かに相談できていれば、彼女は殺人犯にはならなかったでしょう。

たとえば宣子は旦那と離婚をすること。メディアの虚像としてはマイナスのイメージをかぶるかもしれません。しかし彼女のその後の人生を考えれば、それこそ大きな節約となったはずです。

殺人犯となった彼女は、夫を殺したことに後悔はなかったと言いました。それでも、殺人犯になってしまった後悔は、一生つきまといます。

節約は、いつの時代でも大事なこと。しかし、追い詰められないように、ほどほどに。本来の目的を忘れないように。ストレスをためて自分を壊してしまわないように。

 

【相棒season4第18話「節約殺人」】

出演=水谷豊、寺脇康文、伊藤かずえほか

脚本=林誠人 監督=橋本一