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2022年はドラマ「相棒」関連の記事が中心です。

【相棒11-18 「BIRTHDAY」感想】もし小学生が誕生日に殺されそうになったら

この記事ではドラマ【相棒】の数あるストーリーの中でも名作中の名作という評価が高い【相棒11第18話「BIRTHDAY」】の感想などを述べています。

再放送でも泣いてしまう

テレビ朝日では、午後に他局がニュースワイドショーを放送している時間に、主に刑事ドラマの再放送を流しています。

【科捜研の女】や【相棒】の各ストーリーは、何度も何度も再放送されます。

番組欄を見て「今日はまたあの回の再放送かー」と苦笑いしつつ、やっぱり見てしまうのです。

その中でも【相棒11第18話「BIRTHDAY」】は、再放送されるたびに感動して、結末がわかっているのに泣いてしまう名作です。

最初から最後まで、時間差を使った入り組んだ構成で、スリル満点のストーリー。

ラストで右京さんとカイトくんが、心臓が停止した小学生をAEDを使ってマッサージし、生き還らせる場面は「そんなことあるかよー」と思うのに「よかったー!」の感動のほうが強いのです。

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(画像引用・テレビ朝日、東映)

誕生日に「ありがとう」

この日で12歳の誕生日を迎えた、加藤清史郎くんが演じる鷲尾隼人。

彼は卓球スクールの先生の家で、お母さんにプレゼントするために、ハチミツ入りの手作りクリームを作っていました。

ん?誕生日を迎えたほうが、プレゼントを作っている?

《お父さんとお母さんのおかげで、ぼくは今日も元気です。とても健康です。もう心配はいらないよ。今日はぼくの12歳の誕生日。お父さん、お母さん、おめでとう》

おお、なんていい子なんだ!

しかし、隼人が瀬田江美子先生とクリームを作っていると、強盗殺人容疑で指名手配されている大場三郎という男が侵入してきます。

逃げようとする江美子先生は首を絞められ動かなくなり、隼人は大場の命令で、山奥に連れていかれ、2人の遺体を隠すための穴を掘らされました。自分が埋められる穴を自分で掘る恐怖は、想像を絶します。

橋本一監督の「転機」に

この回の監督を務めた橋本一監督は【相棒オフィシャルガイドブック・劇場版4&シーズン14.15】(2017年、ぴあ株式会社)で、「BIRTHDAY」について振り返っています。

それまで悩みがふくらんでいたという橋本監督。

《ああしてくださいっていう決まりがないのが【相棒】の魅力ではあるんですけど、自由である分、自分の中で「本当にこれでいいのか」っていう悩みがどんどん膨らんでいって》

【相棒season2第8話「命の値段」】から【相棒】に携わっている橋本監督。そんな悩みがあったとは。

転機になったのが「BIRTHDAY」でした。

《あのエピソードは全員が脚本を面白いと言って、現場のスタッフからもどんどんアイデアが出て、キャストも含めてみんながスイングして走っていけた。全員が盛り上がって臨めば、これだけ楽しく面白いものが出来上がるんだと実感できたんです》

【相棒】の視聴者から「カイトくん時代の最高傑作」とも言われている「BIRTHDAY」は、現場の雰囲気がガッチリかみ合ってできたゆえに仕上がった作品でした。

この回の脚本を担当したのは古沢良太さん。日本の映画・ドラマ界ではトップクラスの作家さんです。映画の「ALWAYS三丁目の夕日」やドラマ「リーガル・ハイ」など「この作品もあの作品も古沢さんが書いたものだったのか!」と後で知ってびっくりするほど、幅広いジャンルの作品を手がけています。

誕生日が過ぎればこの子は

誕生日は、特別なものです。その日を迎えると、人は1つ年齢が上になります。証明書や申込書を書く時など、誕生日を記入するものがほとんどです。

誕生日プレゼントをもらったり「お誕生日おめでとう」なんて祝福してもらったりしたら、誰でもうれしいものです。

言われたらうれしいから、人は他人の誕生日を「おめでとう」と祝福します。

鷲尾隼人の12歳の誕生日は、これまでとは違う、特別な誕生日でした。

8年前、隼人の父と母は、医師に宣告されました。

「これは遺伝病なので、隼人くんにも発症する可能性があります」と。

隼人が4歳の時です。

「ただし、幼少期に何も症状が出なければ、その後に発症する可能性は極めて低いでしょう」とも言われました。

12歳になるまで発症しなければ大丈夫。父と母は約束しました。隼人の12歳の誕生日は、盛大にパーティーをしようと。

指名手配犯の心の変化

指名手配犯の大場は、自分をもうかばいきれないと泣くカノジョのアパートを出て、卓球スクール時代の恩師の家に逃げ込みました。

先生は警察に通報しようとしました。

カッとなった彼は、先生の首を絞めてしまいました。

先生の死体を隠さなければ。

目撃者となった少年も始末しなければ。

山奥で、少年に穴を2つ掘らせました。

大場は、自分が踏み潰してグシャグシャになったプレゼントボックスから、手紙を見つけました。少年が親に宛てたものでした。

手紙を読んだ大場は、少年に声をかけました。

「死にたくないか。俺と会ったことを、誰にも言わないか」

大場の心の根源にある良心が、彼を踏みとどまらせました。

しかし。

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(画像引用・テレビ朝日、東映)

殺したと思っていた先生が生きていて、スキを突かれた大場は、少年にシャベルで殴られました。

「感動」で終わる素晴らしさ

「BIRTHDAY」は、隼人が小学校を下校する午後3時頃からと、右京さんたちが「家出少女」に導かれて瀬田家を捜索する午後9時過ぎからの話が交互に進行します。

視聴者には、隼人が大場から逃げるシーンと、右京さんたちが6時間後から追いかけて隼人を助けられるかどうかを、スリリングに見られる構成が提供されています。

隼人を殺そうとしていた大場が、隼人の命を必死に助けようとする心境の変化が、繊細に描かれています。

大場に導かれて、右京さんとカイトくんは必死に隼人の命を救いました。

「隼人くん!逝ってはいけない!」

「戻ってこい!隼人!」

あのシーンで、もし隼人が還ってこなかったとしたら。

「戻ってきた時の感動」と「戻ってこない時の失望」の差が大きいほど、ストーリーが「感動」で終わった時の嬉しさは高まります。

家出少女は言いました。

「誕生日は、いくつになっても素晴らしいものよ」と。

「BIRTHDAY」が放送された日を誕生日とするならば、2013年3月13日。

まもなく5年が経過する2018年1月現在でも、その輝きはまったく失われていません。この作品は10歳や20歳の誕生日を迎えても、いくつになっても素晴らしいものであり続けることでしょう。